開発協力

令和6年6月13日

日本の対キューバ開発協力

 

歴史

日本のキューバに対する開発協力は1961年に始まりました。当初は研修員受け入れなどの小規模な技術協力に限定されていましたが,1990年代後半から協力が拡大し,技術協力の他,草の根・人間の安全保障無償資金協力,一般及び草の根文化無償協力などの協力も行なわれるようになりました。2015年には大規模な無償資金協力スキームが開始され,2016年9月,安倍首相がキューバを訪れた際に最初のプロジェクトが署名されました。なお,有償資金協力は実施していません。

 

援助の意義

カリブ地域で最大の国土と人口を持つキューバは,1959年のキューバ革命によって樹立した政権が現在まで続いている社会主義国家であり,ニッケル等の豊富な天然資源を有し,識字率も高いことから,今後経済成長を遂げる潜在性があります。また,中南米・カリブ地域の中でも医療水準が高く,教師や医療関係者の派遣協力等を通じて,中南米やアフリカの開発途上国を中心に大きな影響力を持っています。 一方,キューバは,現在も続く米国の経済制裁等により,深刻な物や資金の不足に直面しており,インフラの老朽化,廃棄物等による環境汚染,低い食料自給率等,多くの開発課題も抱えています。特に近年は,老朽化・不足がちな医療機器の整備,エネルギー源の多角化に向けた再生可能エネルギー分野の開発が喫緊の課題となっています。 このためキューバ政府は,ニッケル等の一次産品に限られた輸出品を多様化するとともに,国内産業の効率化・多角化,外国投資の拡大を進めようとしています。また,近年は,保健医療分野,再生可能エネルギー分野等の新技術導入にも力を注ぎ,さらに食料増産・生産力向上を通じた自給率向上にも取り組んでいます。 キューバが直面する開発課題に効果的に取り組むことができるよう,引き続き開発協力を実施することは,同国の抱える問題の解決の後押しとなることに加え,キューバへの進出を考える日系企業への支援につながることからも意義があります。

国別開発協力方針 / 事業展開計画(2022年4月)

 

援助実績

日本の対キューバ援助は,2017年までの累計(交換公文ベース)で無償資金協力が71.81億円となっています。また,技術協力実績は2017年度までで68.04億円で,2019年度までに技術協力により日本に派遣されたキューバ人研修員は1,073人,キューバに派遣された日本人専門家は311人に上ります。 草の根・人間の安全保障無償資金協力においては,1998年の開始から2023年度までに130案件(11.68億円)が実施されています。

国別データ集(2022)

 

重点分野

日本の対キューバ共和国の援助の基本方針は「持続可能な開発への支援」であり,「農業開発」「保健医療」「環境保全」「社会経済基盤の整備」をその重点分野に掲げています。

(1) 農業開発
 キューバの優先課題である食糧生産力の向上のため,これまで我が国が支援の中心としてきた米の増産への支援に加え,多様な食糧の生産力向上に向けた支援を行う。 

(2) 保健医療
キューバは高い医療技術水準を誇る一方で医療機材の整備や近代化が遅れており,また非感染性疾病への対策が喫緊の課題となっていることから,かかる課題の解決に資する保健医療分野での取組を支援する。

(3)環境保全
廃棄物処理等,これまで我が国が支援を行ってきた環境保全分野を中心に支援する。

(4)社会経済基盤の整備
 生活及び経済活動基盤の整備のため,老朽化・未整備の運輸交通インフラの改善や,キューバ政府が優先課題とする再生可能エネルギーの導入・促進を支援する。また,人々の生活の質向上に資する社会基盤整備を支援する。
 

 

対キューバ共和国援助形態

1.無償資金協力
無償資金協力は,開発途上地域の開発を主たる目的として政府等に対して行われる無償の資金供与による協力をいいます。キューバに対しては下記の無償資金協力を実施しています。

 

• 無償資金協力
キューバに対する大規模な無償資金協力は2015年に開始され,2016年安倍総理大臣キューバ訪問の際に,第一号案件である「全国主要病院における医療サービス向上のための医療機材整備計画」の交換公文が署名されました。その他,これまでに,「稲種子生産技術向上のための農業機材整備計画」,「青年の島における電力供給改善計画」及び4件の「経済社会開発計画」が署名されています。

対キューバ無償資金協力一覧(PDF)  

 

• 草の根・人間の安全保障無償資金協力 (草の根無償)
草の根無償資は, NGOや地方公共団体等の非営利団体に対し大使館が直接行なう援助スキームであり,基礎生活(Basic Human Needs)に資する分野,及び人間の安全保障の観点から特に重要な分野を優先的に支援することを基本方針としています。供与限度額は基本的2,000万円以下で,現地のニーズに迅速に対応できる「足の速い援助」といわれています。キューバ全土の様々な分野で案件が実施されています。

過去の草の根案件一覧(PDF)

2023年度   2022年度   2019年度   2018年度   2017年度   2016年度   2015年度   2014年度   2013年度   2012年度   2011年度   2010年度   2009年度   2008年度   2007年度   2006年度   2005年度   2004年度以前

 

• 文化無償資金協力(一般文化無償,草の根文化無償)
文化無償には一般文化無償資金協力及び草の根文化無償資金協力の2つの形態があります。一般文化無償資金協力は,途上国の政府機関に対し,文化・高等教育振興に使用される資機材の購入や施設の整備を支援することを通じて,開発途上国の文化・教育の発展及び日本とこれら諸国との文化交流を促進し,友好関係及び相互理解を増進させることを目的としています。また,草の根文化無償資金協力は,同様の事業をNGOや地方公共団体などの非営利団体を通じて行なうものであり一般文化無償資金協力と比べると小規模で,供与限度額は原則1,000万円以下となっています。キューバでは1999年にスキームが開始されてから,一般文化無償資金協力8件,草の根文化無償資金協力4件が実施されています。

対キューバ文化無償資金協力一覧(PDF)

 

2.技術協力
技術協力は,開発途上地域の開発を主たる目的として日本の知識・技術・経験を活かし,同地域の経済社会開発の担い手となる人材の育成を行う協力をいいます。同協力には多様な形態があり,キューバではJICAを通じて,開発途上国の技術者や行政官等に対する研修の実施,専門的な技術や知識を持つ日本人専門家のキューバ派遣,協力に必要となる機材の供与などを行なっています。これら3つを効果的に組み合わせた形で実施する「技術協力プロジェクト」は,2008年から開始されており,現在,農業開発の分野で実施されています。また,都市や農業,運輸など各種の開発計画の作成や資源の開発などを支援する開発計画調査型技術協力は2002年に開始され,現在は運輸およびエネルギーの分野でのプロジェクトが実施されています。

JICA各国における取り組み(キューバ)    対キューバ技術協力一覧

 

3.緊急支援
国際緊急援助には,(1)国際緊急援助隊の派遣,(2)緊急援助物資の供与,(3)緊急無償資金協力があり,災害規模や被災国等からの要請内容に基づいて,いずれか,又は複数を組み合わせて行われます。 ハリケーンの影響を受けやすいキューバで,日本はこれまで7件の緊急支援を実施してきましたが,その多くが緊急援助物資の供与となっています。また,草の根・人間の安全保障無償資金協力と組み合わせ,ハリケーン被害を受けた農業・漁業施設の復興や住宅の復旧もにも貢献しています。

対キューバ緊急支援一覧(PDF)
2022 ハリケーン・イアン
2017 ハリケーン・イルマ(PDF)
2016 ハリケーン・マシュー(PDF) 
2012 ハリケーン・サンディー
2008 ハリケーン・アイク